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100円ショップ事件【介護老人との意思疎通】

老人介護をしながらでも楽しく暮らす方法
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はじめに【人間関係上のストレス】

 一般的に、社会生活を送るにはコミュニケーション能力が必須と言われます。
また一方では、人間関係のストレスから、精神疾患の症状を訴える人々が多く存在しているのも事実です。

ストレスについて詳しくは
目指せストレスフリー!【しがみつかず、こだわりを捨て】に書いています。

 わたしの場合もどちらかと言うと、得意なほうではありません。
(誰とも関わらずひとりで自由に生きていけたら)なんて、思うことが度々あります。

 そんなわたしですから、父親とのコミュニケーションを図るのに随分と苦労しています。
父親は俗にいう偏屈で頑固な老人です。どうやって扱えばいいのか途方に暮れる毎日です。

 それでも何度か、父親がわたしに(心を開いたかも?)と、思える瞬間がありました・・・。

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100円ショップ事件【介護老人との意思疎通】

【実体験エピソード】

 「買い物に行ってくるけど何か欲しいものは無い?」
 「何もねえ!」いつもならそう言う筈の父親が、この日は、何の気の迷いか「一緒に行く」と、言った。

 過去にも何度か、買い物に連れて行ったことがあったが、わたしの同行が余程鬱陶うっとおしいらしい。
 一種のプライドのようなものか、歩行速度を合わせると、まるで子犬を追い払うかのように、震える左手で「しいっ、しっ!」といったジェスチャーをした。

 散歩中に立ち寄る近所の小さな商店ではなく、スーパーマーケットであれこれ物色をしたり、自由気ままに歩きたい気持ちも分かるが、これまでも他のお客様にぶつかったり、陳列された商品をぶちまけたりと、お店に迷惑をかけたことがあるのだから、わたしとしても気が気でならない。

 そんなわたしの気持ちも伝わらないのだろう。父親はあくまでマイペースである。
行動を見守っていると、疲れる度に通路の真ん中でしゃがんだりもする。

 まさに他のお客様にとっては迷惑そのものだ。見かねて近づいた店員さんの言葉にも知らぬ存ぜぬの顔である。

 通常は三十分で終わる買い物が、一時間以上かかるのだ。
正直、わたしとしては必要最低限の買い物をして、早く帰宅をし、さっさと家事を済ませたいところだ。

 そんなわたしの苛立ちが伝わるのだろう。いつしか、一緒に買い物に行かなくなった。

 それなのに何故かこの日は、同行すると言ったものだから、「えっ、どうした?」と、疑問の言葉を投げ返してしまった。

 わたしの反応に不服なのか、父親は「やっぱり行かねえ」と、言った。
こうなったら父親の意固地さは、動かざること山の如しである。

 時間をかけてなだめすかしたり、ご機嫌をとったりして、何とか買い物に連れて行った。
(もしも連れて行かなかったら、後々あとあと面倒なことになりそう)と、考えたからである。

 「100円ショップ……」
車に乗り込むなり、父親は仏頂面で言った。
 「はいよ……」
わたしをまるでタクシー運転手かのように扱う父親に少し腹が立ったが、そこはぐっとこらえて、とりあえず言う通りにした。

 100円ショップは家から離れた大型ショッピングモールの中にある。
父親を100円ショップに置いて、食料品の買い出しにでも行こうかと思ったが、不安が頭をよぎる。

 結局、付きおうと決めて歩き出したわたしに、父親は、
「来るな、直ぐに戻ってくるから車で待っていろ!」と、語気を強めて制止した。
(なんだよ、まったく……。)わたしの苛立ちもつのるばかりである。

 10分、15分、20分。
“ 直ぐに ” の感覚が人それぞれとは言え、30分を過ぎても、待てど待てど帰らない。
わたしもついに業を煮やして、お店に入っていった。
しかし、
―――100円ショップにその姿は無かった。

 そう遠くまで歩けない筈であるから、そこまで心配はしなかったが、その身勝手さに心底呆れるばかりである。それにしても中々見つからない。

 15分くらい探したろうか。フードコートで高校生の集団に埋もれ、ひとりでソフトクリームを頬張ほおばる父親を見つけた。



 「100円ショップに用事があるんじゃなかったのかよ!」
 「欲しいもの無かった……。」
 「だったら、一度戻ってこないと心配する………」じゃないか!と、言いかけたときだ。

 溶けだしたソフトクリームが、父親の首を伝ってシャツの中に流れ込んでいった。

 「冷てえ~!」
慌てながら紙ナプキンでソフトクリームを拭いているその様を見ていたら、わたしの怒りもどこかにいってしまった。

 「もったいねえ……」
わたしもソフトクリームを頼んで一緒に食べた。
そのとき、父親が不意に漏らした言葉にわたしはハッとした。

 「これが食いたかった……。」

 和菓子を良く食べているのは知っていたが、ソフトクリームが好物なのは意外だった。
 真夏に「アイスクリームでも買ってこようか?」と、訊ねても決まって「いらね」と返されたからだ。
(わたしに気を使っていたのだろうか?)

 帰りの車中で、もう一度確認してみた。
 「ソフトクリームが好きなのか?」
 「………………。」
 「正直に言えば、買い物のときフードコートに置いてくのに……。」
 「………………。」

 長い沈黙のあと、父親はぶっきらぼうにこう言った。

 「格好悪いべ」

(これからは、冷蔵庫のなかに黙ってアイスクリームを忍びこませよう)
わたしは、心の中でそう思った。


おわり

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あとがき【素直に甘えられる環境を作ろう!】

 お年寄りがなんの気兼ねもなく、自由にものを言える環境を作ってあげることが、わたし達、介護者の努めなのでしょう。
そう頭の中では分かっていても、口で言うほど簡単ではありません。

 意思疎通のひとつ、会話については
  会話上手になりたいなら「あなた」を主語にするべし! に書いています。

 この一件に関しては、父親がわたしに対し、 “ 甘えられない雰囲気 ” を作ってしまったわたし自身の問題だと反省しています。

 ひとつひとつ、勉強していくしかありませんね。共に頑張りましょう。

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