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高齢者コミュニティーでの人間模様(前編)【引きこもり】

老人介護をしながらでも楽しく暮らす方法
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はじめに【ひととの繋がりを求めて】

 人間社会には、複雑かつ多種多様たしゅたようなコミュニティーが存在しています。
例え自由気まま、独りよがりな生き方をしていたとしても、知らず知らずのうちに、何らかのコミュニティーに取り込まれているものです。

 昨今は、SNSでの繋がりといった、バーチャルリアリティーを含めた、新しい形態のコミュニティーが、もはや自然に、ずっと過去から存在していたかのように、わたしたちの中で受け入れられています。

 所詮しょせん、人間とは弱い生き物です。
強がっていたとしても心のどこかで、人との繋がりを求めているのではないでしょうか?
そんな願望は高齢者になっても持ち続けると思います。

 わたしの父親の場合は、願望と言うよりも、渇望かつぼうと言ったほうが適切なのかも知れません。
そんな父親の姿を目の当たりにしたのは、介護生活が始まって一年が過ぎた、初夏のことでした。

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高齢者コミュニティーでの人間模様(前編)【引きこもり】

【実体験エピソード】

 「最近、パチンコに行ってないの?」
 「やめた……。」
 「全部すったのか?」
 「うるせえ……。」

 父親が唯一の趣味とも言ってもいい、パチンコに急に行かなくなった。
よほど疲れるのか、行ったとしても週に一度、それも一時間から二時間程度といった短時間だし、1円パチンコだと言うし、損害も少ないだろうと、わたしも父親のそんな趣味を許していた。

 むしろその頃は、(父親にも気晴らしが必要だろう)と、考えていたくらいだ。
だから、父親の心変わりが気になったのだが、一方で、声のトーンから(どうせ負けて金が無くなっただけで、年金が入ったらまた行くだろう)と思い、その話題はそれっきりとなった。

 ※ 父親は国民年金受給者で生活費の足りない分はわたしが補填ほてんしている。

 年金受給日から十日過ぎた。それなのに父親はパチンコに行こうとしなかった。
そしてどういう訳か、リハビリ施設からも足が遠ざかっているようである。
わたしの立場としては、パチンコのことはさておき、リハビリについてだけは、問いたださない訳にはいかなくなった。

 「リハビリにも行かないのか?」
 「体調が悪いから、良くなったら行く」
 「あれ?散歩には行ってるんじゃないの?」
 「……。今度行くって!」

 (間違いない。何かしらの問題を抱えているに違いない……。)
そのときは一瞬そう思ったが、当時はわたし自身も仕事での人間関係に悩みを抱えており、父親の問題はそれっきりにして、棚上げをした。

 十日くらい経ってからであろうか、年齢にすれば父親よりも少し若めの、そしてどうしても比べてしまうのだが、父親とは違って背筋のしゃんと伸びた、白髪の老人が父親を訪ねてきた。
玄関で応対したときの老人の態度から、少し嫌な予感がしたのだが、わたしはそれを父親に告げた。

 「誰から聞いて来た!」開口一番、父親がその老人に浴びせた言葉がそれだった。
 「○○か、それか○○か?おい、誰だ!」
父親は白髪の老人に向かって、応える暇も与えず、矢継ぎ早に質問をぶつけた。

 「まぁまぁ、○○さん、落ち着い……」
 「うるせぇ~!」白髪の老人の顔もこわばっていた。
数え切れない程の喧嘩をしてきた、わたしでさえも、見たことのない父親の剣幕けんまくである。
そして、「帰れっ!」と、捨て台詞を吐いて、家の奥に引っ込んでしまった。
興奮しているせいか、引き戸の桟に足を引っ掛けて、よろけながら・・・。

 「すみません。とりあえず、外に出ましょう」
わたしは、白髪の老人にそう言った。父親の性格上、一度激昂げっこうしたらおしまいである。
三日間、長いときは一週間以上も、引きずることもあるのだから。
(やれやれ、また血圧が上がっているだろうに……)

 そう遠くない小さな公園に、わたしは白髪の老人を誘って事情を聞いてみることにした。
 「話せば長くなるのですが………。」
老人の実に丁寧な物言いに、父親の先ほどの態度が申し訳なく思えた。

 「私とお父さんは半年くらい前にパチンコ店で知り合いまして、えぇっと、話してみると共通の知人もいたもので、仲良くなったというか、まぁ、話し仲間って感じで、お互いに少ない金額で遊んでいるもので、お金を貸したりと………。」

 「えっ、つまり父親は借金をしているのですか?金額は幾らですか?」
 「いやまぁ、それはいいのですが、話には続きがありまして……。」

 (まさか、借金してまでパチンコをしているなんて……それなのに、父親のあの態度はどういうことなのだろう?)
 わたしの頭の中は、クエスチョンマークと父親への怒りで混乱していたが、白髪の老人は落ち着いた様子で続きをしゃべり始めた。

 「話には続きがありまして……お金を貸しているとは言っても五千円程度の少額ですし、それはもういいのです。」
 「いや、そういう訳にはいきません。この場でわたしが返します。」

 「本当にそれはいいのです。お金の貸し借りもできるような関係性だと、分かりやすく言いたかっただけです。」
 「でも、それは……。」
老人は、首をゆっくりと、大きく何度も横に振りながら話し続けた。



 「いやいや、お父さんにはお世話になってもいるのです。女房が………あっ、私の妻がですね、ちょっと入院していまして、お父さんにはお見舞いや、そうそう、家事もなにも出来ない私へ、差し入れなんかもしょっちゅう持って来てくれました。いやもう、金額にしたら貸した金額の何倍にもなります。杖をついて、重い買い物袋を持って……それはもう、有難くて……。」

 父親の、意外な一面を見た思いがした。
(女性相手ならまだしも、同じ男性との交流。それも、変に人情じみていやがる……。)

 どこかで、そんな父親の姿をいぶかしむわたしがいた。
普段の生活態度からは、つゆほども想像がつかなかったからである。

 「ところが、あることから変な誤解を与えてしまいまして……。」
白髪の老人は、眉間みけんにしわを寄せて言葉を詰まらせてしまった。

 その後の会話は、前後へ行ったり来たり、または脇道に逸れたりしたので、かいつまんで説明しょう。簡単に一言で言ってしまえば、女性トラブルだ。

 以前に、リハビリ施設からの逃走劇!【老人の苦悩と介護者の葛藤】で登場した、おばあさんの存在が原因だったのである。

 ある日、白髪の老人が、奥さんの入院している病院に行ったあと、ふと思いついて、近くだったこともあり、父親の通うリハビリ施設に訪問したと言うのだ。
そのとき、施設に父親の姿はなく、帰ろうとしたときに、そのおばあさんと会ったという。

 ここからは、おばあさんのことをA子さんとしよう。
白髪の老人はA子さんと旧知の間柄だったのである。狭い街ではさもありなんな話だ。
A子さんが父親を訪ねて、施設に足を運んでいたのは、わたしも知っていた。

 リハビリから帰って来た後の父親は、機嫌の悪いときと、上機嫌のときがはっきりしていた。
 上機嫌のときは、(きっとA子さんと会えたに違いない。この色ボケじじいめ……。)と、心の中で悪態をついていたものだ。

 白髪の老人とA子さんは昔話に花を咲かせていたと言う。
そんなタイミングで、父親がタクシーから降りて、二人のほうに近づいて来たらしい。
ところが、そんな父親の存在にも気が付かず、二人は楽しく会話を続けていたと言うのだ。

 白髪の老人が父親の存在に気が付いたときには、すでに遅しといった感じだったらしい。

  高齢者コミュニティーでの人間模様(後編)【ジェラシー!】 へとつづく

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