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介護タクシー、ああ勘違い!【高齢者の思い込みトラブル】

老人介護をしながらでも楽しく暮らす方法
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はじめに【介護認定について】

 介護保険制度で身体介護サービスの一つとして登場したのが「介護タクシー」です。
厚生労働省は社会保険としては認められないとしているが、今ではタクシー業界は勿論、介護事業者までもが、積極的にサービスとして取り入れているのが現状です。

 しかしながら、利用対象者は、(要介護1~5の人)と、限定されます。
高齢者の面倒を見ている方ならご存知かと思いますが、介護保険制度を利用するにあたっては、基準が設けられています。〔 要支援1,2・要介護1~5 〕

 その内容について、詳しく述べまでもありせんが、「要支援2」と「要介護1」の違いはなかなか分かりにくいものです。医師の判断はともかくとして、調査員の匙加減さじかげんひとつといった部分もあると思います。

 正直、傍から見て明らかに???ということもありますが、これ以上は愚痴になるので止めておきます。ちなみに、わたしの父親は「要支援2」です。

 なので、介護タクシーは利用できません。

 介護認定または介護サービスについて詳しくは 公表されている介護サービス!【厚生労働省HPより転載】をご覧になってください。

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介護タクシー、ああ勘違い!【高齢者の思い込みトラブル】

【実体験エピソード】 

 ある日、ひとりで怒り狂っている父親に出くわした。
その形相ぎょうそうは鬼のよう。唸り声をあげ、つえを家の中にまで持ち込んで、ぶんぶんと振り回している。

 少しは正気な部分もあるのだろうか、叩くのはもっぱら布団や枕と壊れない物なのだから。
そんなときは、いつものことだが、近寄らないに限る。
時間を置いて頭を冷やさない限りは、こちらまで火傷をして、要らぬストレスを溜め込む。

 たまに、そおっと気配を消して、父親の寝室に耳を近づけてみる。
ぶつぶつと独り言を繰り返している。これもいつもと同じだが、たまに「うぅぅ~」とか、「ぐあぁ~」だとか、まるで、闇夜の森林で獣たちの息吹いぶきを聞いているようだ。
年寄じみているのを承知の上で言うが、くわばら、くわばらである。

 それから数日が経った。
リハビリ施設に父親を迎えに行ったら、思わぬ現場に出くわした。
車を駐車場に停め、扉を開けると同時に父親の叫び声らしきものが聞こえたのだ。
その声は、確かに「嘘つき!」と、聞こえた。

 わたしは辺りを見渡した。
施設の玄関脇から中庭に抜ける通路があるのだが、その手前に、畳十二畳ほどの芝生が敷かれたスペースがある。そのスペースは花壇に囲まれていて、ひまわりがすくりと背筋を伸ばしていた。



 声はその方向から聞こえた。だが、ひまわりがわたしの視界を防いだ。
それでも近づくにつれ、その声は父親のものだと、断定することができた。

 「お前が、あそこのタクシー300円くらいで乗っていると言ったからだ」
 「いや、それはあくまで自分の場合はと……」
 「うるさい、嘘つきめ!」

 見たことのない、老人との口論である。口論と言うべきか、老人は一方的に父親の罵倒ばとうに耐え忍んでいるといった感じだ。気弱な老人なのだろう、それとも父親が勝気なだけか。
なにはともあれ、わたしはふたりの間に入って、その場を収めるしかなかった。

 二人の間に入るまでは気付かなかったが、その老人は車椅子に乗っていた。
間もなく、黒塗りのライトバン型のタクシーが玄関前に停まった。
―――介護タクシーだ。

 老人は、「すみません、迎えが来たので」と、言い残し、父親のほうを見ないでタクシーに向かって両手で力一杯に漕ぎ出した。タクシーの運転手が降りてきて老人を介助し、車椅子ごとリフトに乗せると、しばらくしてから、走り去って行った。

 父親は、去り行くタクシーのブレーキライトに向けて「この、ぼったくりタクシーめ!」と、睨めつけながら言い放った。そして花壇に咲くひまわりを、むしり取ろうとしたが、慌ててわたしが止めた。

 父親が言うにはこういうことである。
多分、父親が怒り狂っていた日の、前の出来事であろう。
リハビリを終え、タクシーを待っていた父親の耳にこんな会話が聞こえて来た。

 「あそこまでバスでいくらかかる?」
 「片道、580円だよ。でも一時間に一本だから不便だけど、タクシーだと2000円以上もかかるし、仕方がない」

 「○○さん、介護タクシーでいくら?」
 「300円ちょっとかな?おかげさまで助かってる」

 そんな会話のなかに父親が割り込んだと言う。
「おいっ、こっちはバスの停留所まで遠いから仕方なくタクシー使ってるけど片道1000円ちょっとかかる。300円って、家が近いのか?」

 そのとき、父親が嘘つき呼ばわりしていた老人がこう言ったそうである。
「○○町だから、普通のタクシー料金だと、片道2000円以上もかかる。介護タクシーのおかげで何とかリハビリに来れる。」

 それを聞いた父親は、次のリハビリのとき、しめしめと介護タクシーを頼んだというのである。無論、父親は適応外である。
結局、いつもの倍以上の料金を払わされ、あの日、怒り狂っていたという訳だ。
そして、この日は親切にも教えてくれた老人を嘘つき呼ばわりだ。

 わたしは、父親に対し、念入りに介護保険制度の基準を言って聞かせたが、「不公平だ!」である。覚える気の無い者に言うだけ無駄だ。こうなったら、機嫌を治すのが先だった。

 そして、考え込んだ挙句、父親にこう言った。
 「そう遠くない日に、親父も乗れるようになるから」と。

 「おっ、そうなのか?それは楽しみだなぁ」
 父親の曇っていた瞳はようやく光を帯びた。

 一本のひまわりは、そんな父親を見て、うなだれていた。


おわり

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あとがき【否定せず同意から!】

 人間の思い込みとは恐ろしいものです。わたしにも何度か心当たりあります。
ましてや、一般的に高齢者になると、融通が利かなくなったり、頑固になると言われています。

 今回の父親の一件は、“ 介護タクシーは安い” といった部分だけを切り取り、自分勝手に解釈をしてしまった思い込みが原因です。
若年層なら、早とちりで済まされるかも知れませんが、高齢者の場合、そうはいきません。

 わたしの父親のように、ずっと思い込み続けるかも知れないからです。
そんなときは、なにごとも最初から否定せず、同意から始めたほうが良いようです。

 あくまでも、わたしの父親の場合ですので悪しからず。

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