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サン=テグジュペリ『星の王子さま』あらすじ【絆は育てるもの!】

名著から学ぶ(海外文学)
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はじめに【童話『星の王子さま』について】

 『星の王子さま』―――誰もが知っている有名な童話と言えるでしょう。
けれども「全文読んだことがない。」とか、「絵本でしか見てない。」とか言う人も多いようです。

 『星の王子さま』は、200以上の国と地域の言葉に翻訳され、現在でも幅広い年代の人々から愛され続けています。物語が書かれたのは第二次世界大戦の真っ只中です。

 フランス人の作者・サン=テグジュペリは、フランスの首都・パリがドイツ軍に占領されたため、亡命先のニューヨークで『星の王子さま』を執筆します。そして、1943年4月6日、アメリカで出版されました。

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サン=テグジュペリ『星の王子さま』あらすじ【絆は育てるもの!】

サン=テグジュペリ(Saint-Exupéry)とは?

 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリはフランスの飛行家で小説家です。(1900~1944)
サン=テグジュペリは名門貴族の子としてフランス・リヨンに生まれます。1921年、兵役(志願)で航空隊に入り操縦士となります。

 除隊後はセールスマンなどをしながら、1926年、26歳の頃から雑誌に文学作品を発表します。1927年、トゥールーズ―カサブランカ空路のパイロットとなり、その体験から処女作『南方郵便機』(1929)を発表します。

 1935年、フランス―ベトナム間最短時間飛行記録に挑戦しますが、機体トラブルでサハラ砂漠に不時着し、一時は絶望視されましたが、3日後に徒歩でカイロに生還します。このときの体験が後の童話『星の王子様』(1943)に反映されています。

 サン=テグジュペリ

 1939年、第二次世界大戦に動員され、とくに偵察任務に従事します。独仏休戦後、一時、妻とニューヨークに亡命します。亡命先のニューヨークから、自由フランス空軍へ志願し、北アフリカ戦線へ赴きます。

 1944年7月31日、偵察飛行のためコルシカ島の基地を発進したまま帰還せず、消息不明となります。(没年齢・44歳)童話『星の王子さま』の他、著作には、『夜間飛行』(1931)、『人間の土地』(1939)、『戦う操縦士』(1942)、エッセイ『ある人質への手紙』(1943)などがあります。

『星の王子さま(The Little Prince)』あらすじ(ネタバレ注意!)

 主人公の「ぼく」は、小さい頃、絵かきになる夢を持っていました。そこで、ヘビがゾウを飲み込んだ絵を大人たちに見せて回りました。けれども大人たちはそれを “ 帽子 ” の絵だと言います。そんなわけで「ぼく」は、6歳で絵かきになる夢を諦めました。

 大人になり、飛行機の操縦士となった「ぼく」は、6年前、サハラ砂漠に不時着します。飲み水はたった7日分しかありませんでした。不安の中「ぼく」は、砂の上で眠ります。すると翌朝「ぼく」は、一人の不思議な男の子に起こされたのでした。

 「ぼく」は男の子に、「ここで何をしているの?」と訊ねます。けれども男の子は、「ぼく」のことは色々聞いてくるわりに自分のことは中々話しませんでした。でもそのうち、どこかの星からやって来た、王子さまだと知ります。

 日に日に、王子さまのことが分かってきました。王子さまの住む星は一軒の家よりも少し大きく、三つの火山があり、放っておくと星を割いてしまうほどに根を張って巨大になるバオバブという植物が生息していて、王子さまは毎日欠かさず芽を引っこ抜いていたそうです。

 ある朝、王子さまはふと、「ぼく」に、「夕暮れが大好きなんだ。」と言いました。王子さまの星では、見たいときにいつでも夕陽が見られると言います。そして王子さまは、「人は切なくなると、夕暮れが恋しくなるんだ……」とつけ加えました。

 王子さまが星を出た理由もしだいに分かってきます。王子さまの星には、よその星からやって来て種から咲いた、一輪のバラの花があったそうです。バラを美しいと思った王子さまは、毎日毎日、大切に育てました。けれどもバラの花はとても気難しく、王子さまを困らせます。

 そして、一つの喧嘩をきっかけに、バラを信じられなくなった王子さまは、違う星の世界を見に行くために旅に出たということでした。けれども王子さまは後になってから後悔したと言います。「あの子は、いい匂いをさせて、ぼくを晴れやかにしてくれた。それだけで良かったはずなのに……」

 王子さまは渡り鳥を使って星から出ました。そして小惑星をいくつか訪れます。最初に訪れたのは、全てのことを自分の思い通りにしたがる王さまのいる星でした。次に訪れたのは、賞賛の言葉ばかりを求める自惚(うぬ)れ屋のいる星です。

 その次に訪れたのは、自分の恥を忘れるために飲んだくれている酒飲みのいる星でした。四つめの星は、日々を仕事に費やすだけの実業家のいる星でした。実業家は星を自分のものにしたいと言い、「王さまは星を治めるだけだ。私は自分のものにする。」と言いました。

 その次に訪れたのは、星が1分間で1回転するために1分ごとにガス灯に明かりを点けたり消したりしている人のいる星でした。王子さまはこんなことを思います。(王さま、自惚れ屋、酒飲み、実業家と違って、この大人は変じゃない。それは自分じゃないことのために、あくせくしているからだ……)

 六つめの星は、自分の机から離れたことのない地理学者のいる星でした。王子さまは学者に、「おすすめの星はありませんか?」と訊ねます。学者は言いました。「地球という星じゃ。いいところだと聞いておる……。」

 そんなわけで地球にやって来た王子さまは、砂漠に降り立ちます。そして一匹の黄色いヘビと出会いました。ヘビは王子さまに言います。「地球の上で力のない君。俺なら助けになれる。自分の星がなつかしくなったらいつでも……。」

 その後、人を求めて砂漠をさまよった王子さまは、高い火山と数千本のバラの群れに出会います。自分の星が特別だと思っていた王子さまは、自分の星よりもずっと高い山や、自分の星のバラよりもずっとたくさんのバラを見つけ、自分の星がありふれたものだったと気づき、涙を流したのでした。

 そんな王子さまの前にキツネが現れます。王子さまは悲しさを紛らわすため、キツネに、一緒に遊んで欲しいと頼みます。けれどもキツネは、遊ぶには仲良くなることが必要だと言います。さらにキツネは、時間をかけて作られた、“ (きずな) ” が最も大切だと王子さまに教えたのでした。

 これを聞いた王子さまは、自分の星のバラとのあいだにも絆があったと悟ります。そして時間をかけてキツネと接していきました。けれども別れのときは必ずやって来ます。そのとき王子さまは、自分がいつしかキツネと仲良くなっていたことに気づいたのでした。

 別れ際、キツネは、「大切なものは心でなくちゃ見えない。」ということを、王子さまに教えます。「ぼく」は、飛行機を修理しながら、日々王子さまからこんな話を聞いていました。ところが、ついに少しだけ残っていた水が底をついてしまい、途方に暮れてしまいます。

 そんな「ぼく」に王子さまは、「井戸を探しに行こう。」と言いました。(井戸なんて砂漠の中で見つかるわけがない……)と思いながらも、「ぼく」は、王子さまに黙って着いて行きます。

 するとなんと本当に井戸が見つかったのでした。不思議なことにその井戸は、村にあるような井戸です。王子さまは言います。「人って、自分の探し物は分かってない……」

 水を飲みながら王子さまは、地球に来てから明日で1年になると「ぼく」に教えます。この日、王子さまは井戸のある場所に残り、「ぼく」は飛行機の修理に戻ることになりました。王子さまは「ぼく」に言います。「明日の夜、帰って来てよ。」

 翌日、「ぼく」は、飛行機が治ったことを知らせに井戸のあるところへ戻ります。すると王子さまは、井戸のそばにある壊れた石の壁の上に座っていました。「ぼく」が近づいて行くと、なんと王子さまは、黄色いヘビと会話をしていたのです。

 「ぼく」は、ピストルを手に持って駆け出します。すると「ぼく」の気配に気づいたヘビは、姿を消してしまいました。何か不安を感じた「ぼく」は、王子さまに問い質します。そると王子さまは、今日僕んちに帰るんだ……」と告げたのでした。

 王子さまが砂漠にやって来たのは1年前です。この日の夜、王子さまの星は地球のちょうど真上に来ます。王子さまは、地球に来たときと同じ場所、そして同じ時刻に、ヘビに噛まれて自分の星に帰ると言うのです。

 別れを悲しむ「ぼく」に、王子さまは、「僕は僕の星に帰るのだから……君は時々星空を見上げて、たくさんある星の中のどこかに僕がいて笑っていると想うだけで、きっと君も愉快になると思うよ。」と言ったのでした。

―――その夜、王子さまは、ヘビに噛まれて砂漠に倒れます。
この出来事は6年前のことです。「ぼく」は王子さまが、自分の星に帰ったと信じています。なぜなら翌日、王子さまの身体は跡形もなくなっていたのですから。

 それから「ぼく」は、星に耳をかたむけるのが好きになりました。そしてあの星のどこかで王子さまが、バラに困らせられて、笑ったり泣いたりしているのかな?なんて心で考えるようになったのでした。

青空文庫 『あのときの王子くん』 サン=テグジュペリ 大久保ゆう訳
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『星の王子さま』【解説と個人的な解釈】

 主人公の飛行士は、幼少の頃から大人の人間に対して批判的な眼差しを向けていました。けれどもやがては自分も、大人たちに合わせて人生を歩むようになります。そんな主人公の前に、小さな星からやって来た王子さまが現れます。

 言うなれば、主人公が子供だった頃に持ち合わせていた “ 純粋な心 ” を何倍も、いや何十倍も持っている子供です。王子さまと接していくことで主人公は、忘れていた “ 人間にとって大切なもの ” を思い出していきます。

 “ 大切なもの ” とは、目に頼らず心で考えるということです。人間はどうしても人を外見で判断しがちです。けれども実際の人間の価値は違うところにあります。権力や金を手に入れた人間のすることや、言うことが全て正しいとは限らないのです。

 そんな王子さまもまた、あやまちと言うべきか、後悔を胸に抱えて旅をしていたことが次第に分かっていきます。それは自分の星を飛び出した理由―――大切に育ててきた “ バラ ” との確執です。王子さまは、バラと再会を果たすために自分の星へ帰ることを決意します。

 つまりこの物語には、子供のような純粋さ、そして色んな角度から物事を見て本質を知るということの重要性がメッセージとして込められているように感じます。

 と同時に、第二次世界大戦の最中に執筆したということを考えると、“ 純粋な心 ” を忘れて愚かな戦争に導いた大人たちへの批判のようにも受け取ることができます。

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あとがき【『星の王子さま』の感想を交えて】

 「少年のような心を持った大人」という言葉をたまに耳にすることがあります。その意味は大抵、 “ 夢や目標に向かって一生懸命な大人 ” のことを指すと思われます。けれども果たしてそれが本当に「少年のような心」なのかというと少し疑問が残ります。

 どうしても大人になってからと行動というものには損得が付きまといます。一方子供の頃の行動には損得など存在せず、純粋な興味によるものです。『星の王子さま』を読むと、主人公の飛行士同様に、純粋な心を忘れている、自分自身もハッとする瞬間があります。

 ともかくとしてこの作品は、多くの大人たちに読んで頂きたい作品です。そしてときには心を空っぽにして夜空を見上げ、星を眺めて欲しいものですね。

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