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オー・ヘンリー『賢者の贈り物』【愛の詰まったプレゼント!】

一読三嘆、名著から学ぶ
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はじめに【クリスマスシーズン到来】

 例年とかけ離れているとはいえ、街ではイルミネーションが光り輝いています。 そうです。『クリスマス』シーズンだからです。でも、光の渦のなかに浮かぶ人々の顔はどことなく寂しそうです。

 人目を気にして、浮かれることを自制しているからなのでしょうか。
それとも、辛い現実から逃れようと、光につかの間の救いを求めに来ているからなのでしょうか。

 なにはともあれ、子供たち、そして若者たちにだけは、未来への明るい希望を見いだすことのできる日常を、一日でも早く取り戻してもらいたいものです。そんなこと願いながら、わたしは無意識のうちに本棚から一冊の本を手に取っていました。

クリスマスについて
 クリスマス(英: Christmas)は「キリストのミサ」という意味です。キリスト教ではキリストの降誕を祝う祭りと、太陽の新生を祝う冬至の祭りとを融合させ、成立したものと見られています。

 クリスマスは家族で祝うのが一般的で、プレゼントを交換する風習は、もともと聖ニコラウスの日と呼ばれていた12月6日の伝統行事でした。それがクリスマスの日に行うべきと、ドイツの神学者、マルティン・ルターが提唱したことで現在のような形に変わります。

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オー・ヘンリー『賢者の贈り物』【愛の詰まったプレゼント!】

オー・ヘンリー(O. Henry)とは?

 9世紀から20世紀初頭にかけて活躍したアメリカの小説家です。本名・ウィリアム・シドニー・ポーター(William Sydney Porter)(1862年 – 1910年)

 オー・ヘンリーは1862年、アメリカのノースカロライナ州グリーンズボロという町に、医師の息子として生まれます。3歳のとき母親は亡くなり、叔母の手で育てられます。また教育者でもあった叔母の私塾で教育を受けます。

 その後、テキサス州に移り住んだオー・ヘンリーは、銀行や不動産会社、土地管理局等の職を転々とします。またこの頃、結婚もしました。1896年、以前に働いていた銀行の公金横領の疑いで逮捕されます。

 しかし、横領容疑の裁判にかけられる直前、病気の妻と娘を残し、ニューオリンズ、さらに南米ホンジュラスへと逃亡します。その後、逃亡先に妻の病状の悪化を伝える知らせが届き、家に戻ります。しかし妻は先立ってしまいます。

 裁判では懲役5年の有罪判決を言い渡されますが、模範囚としての減刑があり、実際の服役期間は3年と3か月でした。オー・ヘンリーはこの服役中に短編小説を書き始め、その作品を新聞社や雑誌社に送り、3作が出版されます。

 刑務所を出てから本格的に作家活動を開始し、一躍注目を集め、人気作家となります。代表作に『最後の一葉』『賢者の贈り物』等があり、500編以上の作品を残し、短編の名手と呼ばれます。しかし過度の飲酒から健康は悪化し、筆力も落ちていきます。1910年、47歳という短い生涯を終えました。


オー・ヘンリー(O. Henry)
オー・ヘンリー『最後の一葉』に生きる意味を見いだす。
オー・ヘンリー『水車のある教会』に一縷の望みを見いだそう
オー・ヘンリー『罪と覚悟』【再チャレンジできる社会に!】
オー・ヘンリー『二十年後』【歳月人を待たず!】
オー・ヘンリー『理想郷の短期滞在者』【叶えよう変身願望!】
オー・ヘンリー『魔女のパン』【「してあげる」は自己愛!】

作者の生きた時代

 オー・ヘンリーが生きた19世紀から20世紀初頭にかけてのアメリカ合衆国は、鉄鋼業や石油業が繁栄したことで、経済的に大きく躍進していました。領土的にも北米や太平洋圏の島々を植民地化するなど、まさにアメリカ黄金期ともいえるものでした。

 しかしその反面で、まだ西部開拓時代の名残も留めており、人種差別や、多発する犯罪など、多くの問題も抱えていました。そんな時代背景のなか、オー・ヘンリーの作品は生まれていきます。

 オー・ヘンリー自身も、獄中生活、そして裁判中の逃亡生活を送ったことがあるせいか、彼の作品には、犯罪者と刑事(警官)が多く登場します。しかし、その物語は人情味が溢れていて、どこか、古き良き日のアメリカを思い起こさせてくれます。

『賢者の贈り物』あらすじ(ネタバレ注意!)

 ―――1ドル87セント。
 クリスマスの前日のことです。手元にある小銭を数えてみては、泣き濡れている、ひとりの女性がいました。名前をデラと言います。ところが何度数えても金額は変わりません。1ドル87セントのままです。

 デラは週8ドルの家具付きアパートで夫のジムと暮らしています。
かつては夫の収入も週30ドルありましたが、いまは週20ドルに減ってしまい、暮らし向きは決して楽とは言えません。



 それでもデラは夫が帰ってくると、「ジム」と呼びながら、いつでもぎゅうっと夫を抱きしめるのでした。デラは泣くのをやめ、外出をするために身支度を始めます。夫のジムへの贈り物を買うためです。

 さて、この家には誇るべき二つのものがありました。一つは先祖代々から受け継がれてきたジムの金時計です。もう一つはデラの美しい褐色の髪の毛でした。デラはためらいながらも決心します。その美しい髪の毛を売ってお金にしようと・・・。



 デラは「ヘア用品なら何でも。」と書いた看板を見つけます。そしてその店の女主人に、「髪を買ってくださいますか」と、尋ねます。女主人はデラの髪を持ち上げて「20ドル」と言い、デラは「すぐにください」と即決するのでした。

 それからデラは、ジムへの贈り物を探して、街のお店を巡り歩きます。そして、とうとう見つけました。それはプラチナの時計鎖です。その鎖は21ドルもする高価なものでしたが、愛するジムのためです。迷う筈などありません。

 デラは家に帰るとすぐに、短くなった髪の毛をヘアアイロンで整えました。容姿が変わってしまいジムに嫌われやしないかと、気をもんだのでしょう。そして食事の支度にとりかかります。この日のごちそうはチョップ肉です。



 やがて―――ジムは帰ってきました。
けれどもドアの内で立ち止まったまま、ただ、じっとデラを見つめているだけでした。そんなジムにデラは歩み寄り、「髪の毛は切って、売っちゃったの。」と、打ち明けます。

 ジムはぼうっとした状態から我に返ると、デラを抱きしめました。そしてポケットから包みを取り出すと、テーブルに投げ出してこう言います。「その包みを開けたら、どうして僕があんな風だったかわかると思うよ」。



 デラはその包みを開けると同時に歓喜の涙を流しました。―――包みの中には櫛が入っていたのです。デラがずっと欲しいと焦がれていた、宝石で縁取りがしてある亀甲の櫛でした。けれども、この髪飾りによって飾られるべき髪の方がすでになくなっていたのです。

 そして今度はデラの番です。ジムへの贈り物を差し出しました。そして言います。「時計、貸してよ。この鎖をつけたらどんな風になるか見たいの」と。ところがジムは、こう言いました。

 「ねえデラ。僕達のクリスマスプレゼントは、 しばらくの間、どこかにしまっておくことにしようよ。 いますぐ使うには上等すぎるよ。 櫛を買うお金を作るために、僕は時計を売っちゃったのさ。 さあ、チョップを火にかけてくれよ」

―以下原文通り―

 東方の賢者は、ご存知のように、 賢い人たちでした ―― すばらしく賢い人たちだったんです ―― 飼葉桶の中にいる御子に贈り物を運んできたのです。

 彼らは賢明な人たちでしたから、もちろん贈り物も賢明なものでした。 たぶん贈り物がだぶったりしたときには、別の品と交換をすることができる特典もあったでしょうね。

 さて、わたくしはこれまで、つたないながらも、 アパートに住む二人の愚かな子供たちに起こった、平凡な物語をお話してまいりました。 二人は愚かなことに、家の最もすばらしい宝物を互いのために台無しにしてしまったのです。

 しかしながら、今日の賢者たちへの最後の言葉として、こう言わせていただきましょう。 贈り物をするすべての人の中で、この二人が最も賢明だったのです。 贈り物をやりとりするすべての人の中で、 この二人のような人たちこそ、最も賢い人たちなのです。

 世界中のどこであっても、このような人たちが最高の賢者なのです。 彼らこそ、本当の、東方の賢者なのです。


『賢者の贈り物』 原作:オー・ヘンリー 翻訳:結城浩
https://www.hyuki.com/trans/magi.html

東方の三賢者とは?

 キリスト教での賢者はとくに『マタイによる福音書』(2章1節~13節)に登場する占星術の学者たちのことを指します。

 賢者は星を見てキリストの降誕を知り、東方から贈り物を持ってやってくるのですが、博士と訳すこともあります。「東方の三賢者」。


東方の三博士の来訪(画)ハインリヒ・フェルディナント・ホフマン

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あとがき【『賢者の贈り物』の感想も交えて】

 『マタイによる福音書』によると、東方の賢者は、母マリアと共におられた幼子に、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。と、あります。

 作者は、この物語の主人公ふたりに、彼らこそ、本当の、東方の賢者なのです。と、言っています。宗教観は違えども、どんな高価な贈り物より、ふたりにとって素晴らしい贈り物だったということは理解できます。

 悲しいかな、今の時代、ものの価値は金額で決められています。けれども、人の “ こころ ” の価値だけは金額で推し量れるものではありません。そんな当たり前のことを『賢者の贈り物』という短い作品はいつも思い出させてくれます。

 と、同時に、人の “ こころ ” の温もりが、この地球上を覆いつくすような幻想を、わたしに抱かせてくれます。

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