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高齢者から学ぼう!【昔の常識がいまや専門知識】

老人介護をしながらでも楽しく暮らす方法
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はじめに【亀の甲より年の功】

 『亀の甲より年の功』ということわざがあります。
“ 年長者の経験や知恵はとうとぶべきである ” といった意味ですが、現代ではひとつ屋根の下に三世代で暮らす家族そのものが少なくなってきております。
必然的に、高齢者と触れ合う時間が少ないのですから、学ぶ機会も減ってくるでしょう。

 ある日、何気なくリハビリ施設内のレクリエーションルームを覗いたときのことです。
七十歳過ぎのおばあさんが青年の介護士さんに向かって、「前から思っていたんだけど○○さんが良く使っている “ ぶっちゃけ ” って言葉、あれはどういう意味かしら?」と、訊ねていました。

 咄嗟(とっさ)の質問ですから、その青年も直ぐに言葉を返せません。
 「えぇ~、えっと、あ~、はいはい、分かりました。ぶっちゃけると!です。」
何とか返答を絞り出した青年に、おばあさんはこう言いました。
 「本音を言うと、ってことね。ありがとう。」

 こんなやり取りの一部始終を目にしたわたしは、以前知人の紹介で一度食事をする機会があった、とある大学で講師をしている先生の言葉を思い出しました。

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高齢者から学ぼう!【昔の常識がいまや専門知識】

濃いお茶のはなし

 その先生は福祉や介護を教えています。
先生は、「いまの若い人はびっくりするほど作法にうとい」という言葉を皮切りに、ため息まじりの若者論を繰り出し始めました。

 介護実習でのことです。「濃いお茶(せん茶)を入れて下さい」とお年寄りから頼まれた若いヘルパーが、必死に棚を探し始めたんです。
 「ハイ。え~と、濃いお茶って、どこにあるのかな?」そう言いながら。

 日本茶の濃淡は、急須に入れる葉の量を多くしたり、湯の温度やさす時間を考えて味を調(ととの)えますよね。それを知らないのです。お茶を自分で入れたことがないのだろうか。それとも、お茶は大量生産のペットボトルや缶の中から流れ出てくるものと思い込んでいるのか・・・。

浴衣の着付けのはなし

 「あなた、私を殺す気っ!学校で教わらなかったの?」と、寝間着や浴衣を左前、おまけに帯も縦結びにされたお年寄りが、若いヘルパーを叱りつけている姿を目にします。

 ともに仏式では葬儀のスタイルだっていうことも知らないのです。おおむね高齢になると、そういうことを気にする人が目立ちますから。

 介護実習ではしっかりと、介護者から見て、えり元が「ソ」の字になるよう着付けを教わります。でも、あわてれば度忘どわすれもします。そもそも和服は成人式や卒業式、結婚式くらいしか着なくなりました。

 エプロンのひもを腰の後ろで結べない、若者も見かけます。ときに縦結びにしてしまう場合もあります。ひもをやめ、ボタンにした施設もあります。ユニバーサルデザインの時代から、使い勝手のよい方にすればいいだけの話ではあるが、手先が不器用になっていくのは惜しいものです。

テレビを持っていないはなし

 「○○が収賄で逮捕だってよ。ほんとろくなもんじゃないね」そう言ったお年寄りに「芸能人ですか?すみません。テレビ持ってないもんで」と、テレビを持っていないという理由で、会話を終わらせる若いヘルパーもいます。

 テレビどうこうの問題じゃなくて、お年寄りとコミュニケーションを図ることもヘルパーの重要な仕事のひとつです。今はニュースとか情報はスマホがあれば何だって拾えます。

 それに、たとえ知らない話題だったとしても、素直な姿勢で、「そのことは知らないです。すみません。教えてくれませんか?」と言えば、自然に会話に花が咲き、信頼関係も生まれるじゃないですか。

 大げさに言えば、いまの若い人を見ていると、画一化(かくいつか)の危機に直面しているのではないかと不安になります。

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あとがき【高齢者は生きた図書館!】

 自分の過去に触れられるのを酷く嫌うお年寄りも少なくないようです。
そんなタイプのお年寄りだとしても、人の役に立ちたいと思う気持ちは持っています。

 教えを乞うことで、“ 昔は常識だったことも、時がたてば“専門知識 ” 化する場合もあります。

 先生はこんなことも言っていました。
「生きた図書館」であるお年寄りから豊かな経験や伝統をくみ取るゆとりが介護側に充分あるかといえば、心もとないです。

 十分なコミュニケーションさえあれば、苦情、ひいてはドキッとするような「ひやり・はっと」事故も減っていくでしょう。

 コミュニケーションは、人間にとって最も大切な生き方なのですから

 高齢者から学ぼう!【昔の常識がいまや専門知識】芸能編

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