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新美南吉『飴だま』『二ひきの蛙』あらすじ【仲直りの方法!】

名著から学ぶ(童話)
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はじめに【謝ったら死ぬ病】

 最近よく耳にするようになった言葉に(あやま)ったら死ぬ病」というものがあります。謝れない人間を皮肉る時に使われるスラング(俗語)のことですが、考えてみるとわたし自身もある一時期そんな病気にかかっていたような気がします。

 今になって考えると、自分の非を認めることで相手からマウントを取られるのが怖かったからだと思います。当然ながらその相手とは喧嘩になってしまい、そのまま関係が壊れてしまうってこともしばしばありました。

 「謝ったら死ぬ病」ですが、同時に「相手に謝らせたい病」にもかかると言われています。わたし自身、なぜあの頃そんな「病気」にかかっていたのか分かりませんが、今になってから言えることはただ一つ、自分が愚かだったということだけです。

 もう一度戻れるのなら素直に謝りたいものです。ともかくとして今回は、新美南吉の童話『飴だま』と『二ひきの蛙』をご紹介します。

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新美南吉『飴だま』『二ひきの蛙』あらすじ【仲直りの方法!】

新美南吉(にいみなんきち)とは?

 新美南吉(本名・新美正八)は、日本の児童文学作家です。(1913~1943)
大正2(1913)年7月30日、愛知県知多郡半田町(現・半田市)に畳屋の次男として生まれます。幼い頃に母を亡くし、養子に出されるなど寂しい子供時代を送ります。

 中学時代から童話を書き始め、特に北原白秋には強い影響を受けて、童話・童謡同人誌の『赤い鳥』や『チチノキ』などに投稿します。その後、東京外国語学校に進学しますが、在学中に病(結核)を患います。

 20代後半の5年間は安城高等女学校(現・県立安城高等学校)で教師をしながら創作活動を続けていましたが、体調が悪化してしまい、安城女学校を退職します。退職後はほとんど寝たきり状態になり、昭和18(1943)年3月22日、29歳という短い生涯を終えます。

 『ごんぎつね』『おじいさんのランプ』『手袋を買いに』を始めとして、多くの童話・小説・詩などの作品を残しています。地方で教師を務め、若くして亡くなった童話作家という共通点から宮沢賢治との比較で語られることも多く、「北の賢治、南の南吉」と、呼ばれています。

     新美南吉

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『飴だま』あらすじ(ネタバレ注意!)

 春の暖かい日のことです。小さな子どもを二人連れた女性が、渡し舟に乗りました。舟が出ようとすると一人の侍が乗り込んで来ました。その侍は舟の真ん中に座って居眠(いねむ)りを始めます。侍を見た二人の子どもは、ふふふと笑いました。

 お母さんはそんな子どもたちを叱ります。侍を怒らせては大変だと思ったからです。しばらくすると一人の子どもが、「飴だまちょうだい!」と母親に手を差し伸べます。するともう一人の子どもも、「あたしにも!」と言いました。

 ところが飴だまは一つしか残っていませんでした。二人の子どもはせがみ、だだをこね始めます。お母さんは困ってしまいました。すると居眠りをしていたはずの侍が眼を開けてその様子を見ていました。

 お母さんは、(侍はきっと怒っているに違いない……)と思い、子どもを必死でなだめます。けれども子どもたち止めません。すると侍が刀を抜いてお母さんと子どもたちの前までやって来たのです。

 お母さんは真っ青になります。子どもたちを侍が斬り殺すと思ったからです。「飴だまを出せ!」と侍は言いました。お母さんは恐る恐る侍に飴だまを差し出します。すると侍は、その飴だまを刀で二つに割って子どもたちに分けてあげたのです。

 それから元の場所に戻った侍は、再び居眠りを始めたのでした。

青空文庫 『飴だま』 新美南吉
https://www.aozora.gr.jp/cards/000121/files/4723_13209.html

『二ひきの蛙』あらすじ(ネタバレ注意!)

 緑色の(かえる)と黄色の蛙が、畑の真ん中でばったり出会いました。二ひきの蛙は、お互いの体の色のことで言い合いになります。そしてとうとう喧嘩を始め、取っ組み合いになってしまいました。

 するとその時、寒い風が吹いてきます。もうすぐ冬がやってくるのです。蛙たちは土の中にもぐって寒い冬を越さなければなりません。「春になってからこの喧嘩の勝負をつけよう!」二匹の蛙はそう言って土の中へもぐりました。

 寒い冬が去って春がやってきます。先に目を覚ました緑の蛙は、土の中で眠っている黄色の蛙を起こしました。「去年の喧嘩を忘れたか!」緑の蛙が言います。「待て、体の土を落としてからにしようぜ。」黄色の蛙が言いました。

 二匹の蛙は池の中に飛び込みます。体を洗い終えた緑の蛙は目をぱちくりさせて、「君の黄色は美しい!」と言いました。黄色の蛙もまた、「君の緑だって素晴らしいよ!」と言いました。そこで二匹の蛙は、「もう喧嘩はよそう。」と言い合ったのでした。

 良く眠ったあとでは、人間も蛙でも機嫌が良くなるものです。

青空文庫 『二ひきの蛙』 新美南吉
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あとがき【『飴だま』と『二ひきの蛙』の感想を交えて】

 『飴だま』には、心の優しいお侍が登場します。お侍は子どもたちを怖がらせないよう眠ったフリをしていたのでしょう。そして飴だまを半分に切ってあげた後も、感謝されないように再び眠ったフリをしたのです。

 この物語は、平等の大切さと、さりげない優しさの重要性を教えてくれます。一方『二ひきの蛙』は、相手の真実の姿を知ること、そしてその相手を理解することの意義を教えてくれます。

 さて、「謝ったら死ぬ病」の患者についてですが、実際のところ周りから見たら小さな人間に見えることも多いようです。そう考えるとこの病気、自分にとってマイナスにしかならないということを早く知るべきでしょう。

 ともかくとして、ご紹介した二つの童話はとても短い作品ですので、子供たちのみならず、どうか一人でも多くの方に読んで頂きたいものです。

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