はじめに【メールコミュニケーションの弊害】
SNSが普及したからなのか、心なしか、会話の形態が変わってきているような気がします。メールコミュニケーションをそのまま日常会話に置き換えたかのようなやり取りのことです。
メールの場合は、一文字でも打つ手間を省くため、短い文章になります。
たとえば、「おはようございます」が「おは」、「お疲れ様でした」が「おつ」とこんな感じです。
会話が簡略化していると言われたらそのとおりですが、それを日常会話に持ち込まれると、思わぬところでトラブルの引き金になることもあります。当然、コミュニケーション能力も低下していくことでしょう。
前に別の稿で、『言挙げ』をしないのが日本の文化と言いました。
言挙げしない国、空気を読む習慣【日本人の言葉について】
しかしこの会話法は、便利さを追求するあまり真心を失うようなものではないかと、わたしは考えます。そんな理由でコミュニケーションのひとつ、会話について考えてみようと思います。
会話上手になりたいなら「あなた」を主語にするべし!
会話上手な人とは?
会話上手のもっとも大きなカギとなるのが『キャッチボールができるかどうか』ということです。使い古された言葉のように聞こえるかもしれないですが、その意味するところを深く理解している人、実践できている人は実は少ないのではないでしょうか。
次のカギになるのが、『聞き上手かどうか』ということです。
たまに、「うんうん」と相槌を打つことを聞き上手だと勘違いしている人がいますが、使い方や “ 間 ” を間違えると相手を不愉快にさせてしまったりもします。
会話のキャッチボールについて
たとえば、そもそも相手にボールを投げない人がいます。
むっつり口を結んで言葉自体をなかなか発しない人、もしくは、相手に向かって投げるのではなく自分の言いたいことばかりをとにかく四方八方にまき散らす人です。また、相手にボールを投げるには投げるのですが、そのボールの種類に問題がある人もいます。
(部下がアイデアを提案した途端にいきなり)「失敗したらどう責任取るつもりなんだ?」
(何か新しいことを勉強し始めた相手に向かって)「今さらそんなの勉強してどうするつもり?」
こんな具合で、相手のやる気をそいだり、相手をイヤな気分にさせてしまう質問を繰り出す人がいます。相手としては投げてほしくない、受けとめたくないボールばかりを投げてしまうのです。
そしてさらに、相手から返ってきたボールに対して「そんなのおかしいよ、そもそもだな・・・」「甘いよ。だからお前は・・・」「何言ってるんだ。オレの若い頃はなあ・・・」などと、相手の気持ちや意見をいったん受けとめることをせず、いきなりバットで打ち返してしまう人たちもいます。
聞き上手について【ダイアローグとモノローグ】
話し下手の人の多くは、相手不在の会話をしている、独り相撲の会話をしている、ダイアローグ(対話)ではなくモノローグ(独白)をしているとの言い方ができるでしょう。
これでは会話は盛り上がらないですし(自分だけは盛り上がっているのかもしれませんが)、相手から好感や信頼感を勝ち取るのは難しいです。まずは相手を尊重した会話ができているかどうかに気を配ります。
たとえば、「あなた」を主語にしてきちんと相手の話を引き出しているかどうか、されると嬉しくなるような質問をしているかどうか、相手の話をきちんと受けとめて共感を示しているかどうか、ほめるなどのポジティブなフィードバックを行っているかどうかといった点です。それが本当の意味での会話上手への第一歩なのです。
あとがき【「ウンチク」は我慢!】
余談ですが、ある雑誌によるアンケート調査の結果では、食事のシーンで女性からもっとも嫌われるのは、会話のなかで「ウンチク」ばかりをひけらかす男性でした。
これもまた、モノローグ(独白)の類です。
男性というのは、女性を前にするとついつい “ 自分のすごさをアピールしよう ” とウンチクや自慢話を始めてしまいがちなので注意したいものです。
いずれにしても、会話上手になる近道は、相手について興味を持つ、相手の立場になって考える、ひいては相手のことを好きになる、といった小さな努力の蓄積なのではないでしょうか。そうわたしは考えます。
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